筋トレの危険性!!

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筋力トレは健康増進にとって諸刃の剣

近年の「筋トレブーム」によって、もはや筋トレはアスリートだけのものではなくなりました。現在では、老若男女を問わず健康増進の為の筋トレが浸透しつつあります。確かに、筋トレは骨格筋の肥大(筋肉を大きくする事)を通して、基礎代謝量の増加や、糖・脂質代謝の改善、骨密度の増加など、健康増進上の様々な恩恵を与えてくれます。しかし、このような恩恵に比べて、筋トレの弊害についてはあまり知られていません。それは、筋トレによる動脈硬化の促進です。2007年に発表された研究では、長期間筋力トレーニングを継続した筋力系アスリート(アメリカンフットボール選手、やり投げ選手など)は、一般成人と比較して動脈が硬い事が報告されました。また、一般成人であっても、筋トレを一定期間継続すると、動脈が硬く変化する(動脈硬化が促進する)事が分かっています(図1)。健康になる為に筋トレをしているのに、動脈硬化が促進してしまっては本末転倒です。では、なぜこの様な事が起こるのでしょうか?

血管の健康に重要な「血管内皮機能」

血管は輪切りにしてみると三層構造をしており、外から順に外膜、中膜、内膜で構成されています。三層のうち、最も内側に位置している内膜には血管内皮細胞があり、この細胞が血管の健康に関わる様々な物質を分泌します(図2)。近年の研究では、血管内皮細胞の機能を正常に保つ事が、血管の健康を守る為にきわめて重要である事が明らかにされつつあります。この血管内皮細胞の機能は、「血管内皮機能」と呼ばれ、将来の動脈硬化を予測する重要な因子とされています。つまり、血管内皮機能が低下すると、今現在は血管の硬化を起こしていなくとも、将来的に血管が硬化する危険性が高い事が分かっています。長期的な筋トレによる身体の適応は、1回1回のトレーニングの積み重ねにより生じます。したがって、1回の筋トレ後に生じる血管内皮機能の低下が積み重なる事で、長期的に血管の硬化(動脈硬化)を促進させている可能性があります。

筋トレ後に行う有酸素性運動の効果

筋トレ後に10分間の有酸素性運動を行った条件では、血管内皮機能は筋トレ後に一旦大きく低下するものの、その後10分間の有酸素性運動によって回復しました(図3)。したがって、筋トレ後に有酸素性運動を(少なくとも)10分間行うことで、低下した血管内皮機能を回復できる事が明らかになりました。したがって、血管の健康を保つという側面から考えた場合、筋トレを先に行い、その後に有酸素性運動を行う順序が適切であると考えられます。

引用:法政大学スポーツ研究センター 森嶋 琢真 特任・任期付講師(Morishima Takuma)

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